9月10日(月)。月曜日はフィールドワークの日だ。
その朝、私は普段と違う駅でフィールドワークのパートナーのメジと待ち合わせした。
ムンバイの列車の駅には改札口がない。駅の切符売り場で切符を買ったとしても、誰にも見せることなく駅のホームに行き、電車に乗り、目的地の駅で降りる。私はそれまでずっと真面目に切符を買い続けていた。でも内心、『これ、絶対タダ乗りできるだろ!』と思っていた。
折しも、その日はちょっとした実験で、大学院の最寄りのゴバンディ駅からムンバイ中心部に2駅分進んだクルラ駅でメジと待ち合わせをした。
クルラは2つの線が交わる大きな駅なので、オートリキシャ代は少しかかるけど、クルラ駅まで直接行ってしまえば乗り換えが一つ減る。(ムンバイの乗り換え駅はたいてい混んでいて、乗り換えるのは結構ストレスフルなのだ。)
私はクルラ駅から電車に乗るのが初めてだったので、いつも使っている前払い切符の打刻機がどこにあるか知らなかった。(前払い切符は、自分が乗る分の料金の切符に、その日の日付・時刻・駅名を機械で打って、乗車する仕組みだった。)で、パッと見て打刻機が見つからなかったのを口実に、ちょっとした冒険心で『よし、無賃乗車できるかやってみよう!』と思い立った。(ごめんなさい。)
しかし。神様は見ていたのだ・・。
私は駅の構内にまんまと入り、4番線ホームの女性車両エリアでメジが来るのを待っていた。メジは遅刻魔だ。私は何本も電車を見送った。
「ソーリー、ミヤマ。」
20分くらい待ったところで、やっとメジが来た。さあ、次の電車に乗るぞ〜と思っていると、二人のおばさんがホームの向こう側からやって来た。うすいカーキ色の半袖シャツに、ズボン姿。制服みたいだった。いやーな予感。そのおばさんの一人が、
「チケット?」
と言った。私は慌てた。改札!?あったの?
メジはちゃんといつものゴバンディ駅からプリペイド切符に打刻をして来ていた。
(私)「メジ・・・私今日持ってない。機械がどこかわからなくて・・。」
(メジ)「オ、オ〜ウ。」(苦笑い)
おばさんは私が有効な切符を持ってないと分かると、したり顔で何か小さな帳簿(日本でよく見る領収書サイズ)に書き込み始めた。そして、書き終わるとその紙切れを破って私に突き付けた。
「あなたは罰金を払わないといけないわ。254ルピー(約400円)よ。」(英語)
(※ちなみに、私がタダ乗りしようとしていたのは、たかだか8ルピーくらいの区間。日本円なら約13円ほど。笑。それに引き換え250ルピーあれば割と良い夕ご飯が一人分食べられるくらいの金額。)
メジは弁解を試みようとしてくれたが、実際私がタダ乗りしようとしていたのには変わりない。私は観念して罰金を払った。その後、ちゃんと駅の切符打刻機を見つけて印字してから、フィールドワークに向かった。
メジ曰く、私は(北東部出身のメジもだけど)いわゆるインド人と顔つきが違うから、ああいうお役人さんに目を付けられやすいそうだ。おばさんたちはあんな風に外国人から罰金をせしめて、自分の懐に入れるらしい。それにしても、やっぱり悪いことはするもんじゃないのね・・・。良い子は真似しないで下さい、というお話。
最寄りのゴバンディ駅
女性車両の中はこんな感じ
コメント
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普段やらないことを、たまたま半ば不可抗力のような形でやってしまった時に、車掌さん登場。映画の一場面のようですね。
天は見ているのですね^。^;
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>アヨアン・イゴカーさん
はい、まさに映画のようでした…(笑)
[…] (罰金を払わされた私の苦〜い体験は、こちらからどうぞ・・。) […]
[…] 無賃乗車してみようとして捕まったのも、この日の朝、フィールドワークに行く前の出来事(そのお話はこちら)。そして、フィールドワークで新しいプロジェクト先を見てきて、帰りに最寄駅でムンバイ渡航後初めて日本人に遭遇したのもこの日だった(その時のお話はこちら)。 […]
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