まずみなさんにご紹介しておきたいのは、インドでは中流家庭でもけっこう使用人(メイド)を使っている、ということ。(いわんや上流階級をや…。)
実際、私たちや大学院の同級生のアパートメントにも、メイドがお掃除に来ていた。中には自分で掃除していた友達もいたけど。
これはまさにインドのカースト制度から来るもので、カースト最下層のお掃除カーストの女性たちは、メイドとして各家庭の掃除や洗濯をしている。
しかも、人件費が安かった。例えば、2軒目の家でお掃除を頼んでいたメイドのおばちゃんカストリエは、ほぼ毎日アパートメントの3部屋をほうきで掃いて、雑巾掛けして(雑巾を浸すバケツにちょっと洗剤を垂らしてた)、1ヶ月500ルピー(約850円)のお給料。それを、大家さんのアパートメント(2フロア分あった)や他の家とも掛け持ちしていたみたい。
(ただし、留学中に法律が制定されて、メイドが1日8時間ほど働いている場合は、月給8000ルピーくらいは払いなさい…という流れになっていた。しかも、インドは毎年どんどん物価が上がっているので、最近はもっとメイドさんたちのお給料も高くなっているんだろうな…。)
掃除や洗濯に人を雇うなんて、何でも自分たちでするのが当たり前!…の日本人の感覚からすると違和感があると思う。
私も実際、初めはなんだか変な感じだった。そもそも、家族や友人以外の人がしょっちゅう家に入ってくるとは…。掃除をしてくれるのも、悪いなぁ、自分たちが汚したのに…。なんて思っていた。でも、日常的にそれが繰り返されていくと、メイドがお掃除をしてくれる「日常」に慣れていった。
さて、本題のクワトラ家の使用人はなんと4人もいた!(驚き!)
①カルパナ(床掃除、キッチン掃除、トイレ・お風呂場掃除、洗濯、洗濯物たたむ、皿洗いなどなど)
いちばん私が接点のあったメイドさん。彼女は20代くらい。身長は145cmもないくらい小さかった。髪の毛をひっつめて後ろ一本のおさげに編んで、いつも清潔な赤か青色のサリーを着ていた。小さな鈴のいっぱい付いたアンクレットのようなものを足に巻き付けていたから、彼女が歩くたびに繊細な高い音がシャラシャラ鳴ってた。
彼女は英語をしゃべらなくって無口だけれど、とっても働き者だった。私が留学中に見た限り、いわゆる「メイド」がする一般的な仕事は床の掃き掃除&拭き掃除。でも、彼女は下宿人スペース(クワトラ家の2階・3階)のお掃除・片付け・洗濯関係を一手に引き受けていた。
彼女は朝10時前後にシャラシャラとやってくるとまず、私たちのランドリーバッグから洗濯物を集めていって、洗濯機に突っ込んだ。
それから、細長いホウキで広―いフロアを隅から隅まで掃き始める。それが終わると、洗剤入りの水が入ったバケツを持ってきて、雑巾掛け。そしてトイレとシャワールームも掃除。その後に台所のお片付け。
私は自分で使った食器は自分で洗う主義だったけど、カルパナは他の女の子たち(インド人・アメリカ人・フランス人などなど)が使って、シンクに入れっぱなしにしたお皿や鍋もきれいに洗った。それから、浄水器の水をボトルに10本分くらい入れて置いといてくれた。
ところで、インドの古い家やアパートメントには、何階だろうと蟻の侵入経路がばっちり出来上がっている。(6階だろうとわんさか来た…2軒目のお家での話。)
クワトラ家では、同居人の女の子たちが食べた後のお皿や食べ残しのパンなんかをリビングのテーブルに放置したままのこともしばしばあった。
そんなある朝。テーブルを見た私は絶句。テーブルいっぱいに蟻が群がってる…!!!(しかも、フランス人エレンはチョコクリームをパンに塗って食べるのが好きで、チョコクリームのカスが残されたお皿なんて、やつらには大好物!)そんな蟻だらけのテーブルも、カルパナは何も言わずに片付けてくれた…。脱帽。
彼女はお昼ごろ一度帰って、午後にまた来て、乾燥機にかけた洗濯物をぜんぶ畳んで、ひとまとめにして置いていってくれた。彼女のお給料はいくらか知らないけど、本当によくできたメイドさんだった。ほぼ毎日来て、たまに窓の掃除なんかもしてくれた。ありがとう!!
②パディ(1階の大家さん一家の掃除・片付け全般と、雑用係)
彼女は20~30代。イスラム教徒なので、外から来るときは全身真っ黒なチャドルを着て来る。で、クワトラ家に着くとそれを脱いで壁にかけて、クルタ姿(動きやすい一般的なインドのチュニック)で仕事を始める。
彼女は基本的には下の階で働いていた。けど、なんでも屋さんといった感じで、2階のキッチンのガスシリンダーが空になった時、新しいシリンダー(日本にあるプロパンガスの3分の1くらいの大きさ)をよいこらしょ、と持ってきて替えてくれた。あれ、けっこう重かったと思う。
③カラ
30代くらいのやわらかな雰囲気の女性。1階で大家さんたちのお料理係。
④ハリー(唯一の男性。雑用係なんだろうけど、一体何者…?笑)
クワトラ家では私が知りうる限り、インドの家庭で最多の使用人4名を抱えていた。そして、男性の使用人を見たのは、後にも先にもハリーだけだった。(しかも住み込み。)
彼は20代の、細身でテキパキした働き者。英語もしゃべれる。やってたことは電球の交換とか、ちょっとした大工仕事とか、いわゆる雑用係だった。大家さん夫婦が高齢で、それ以外の同居家族は40代の未婚の娘だけだったから、男手が必要だった…のでしょうか。はてさて。
朝、ハリーが通勤スタイル(シャツとズボン)でバイクにまたがって出かけていくのもよく見た。外でも何か仕事をしてたのかしらん。夜には、1階のTVがある5畳くらいの部屋で、ハリーだけ小さなソファに座ってTVを見ていた。(部屋にあった大きなソファはきっと大家さんの家族専用で、使用人の彼は座っちゃいけないんだろう…とか勝手に解釈していた。)TVの部屋がお勝手口から近いので、夜に私たちが帰ってきてそこの呼び鈴をブーーッと押すと、ハリーが扉の鍵を開けに来てくれた。お勝手口の横に2畳あるかないかの小さな部屋があって、たぶん彼はそこで寝ていた。
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