第1学期(2012年6~10月)31.こんなとこに日本人・・・②

(①からの続きです)

 

ゆりさんたちは、チェンブー駅から歩いて数分のホテルに泊まっていた。

「こんにちは〜!」

NGO「光の音符」代表のゆりさんは、豆粒みたいに小さな顔に、笑顔が印象的な女性だ。歳は私の親世代、京都の大学で音楽の先生をしている。ホテルには他の男子学生もいて、ホテル内のカフェで4人くらいで話をした。

 

 NGO「光の音符」は京都を拠点にした学生主体のボランティア団体だ。代表のゆりさん以外は、基本的に関西の大学生がメンバーとなって活動している。

 インドでは2004年から活動。(そのずっと前から京都では音楽を通じた活動をいろいろ行なっている。)ムンバイのワダラという地区のスラムで、そこの子どもたちに言葉(ヒンディー語や英語)・歌・ダンスを教える教室を開いている。子どもたちは、親の仕事の手伝い(日雇い的な結婚式の飾りつけなど)のために学校に行っていないことも多い。教室には専任のインド人スタッフを雇っていて、ゆりさんは大学の長期休みを利用していつもインドに渡っている。夏と春には、スタディツアーでたくさんの学生さんたちも来る。

 

「どうしてインドに来たの?」

「大学院では何を勉強してるの?」

 その時は、もっぱら私の生い立ちや大学院のことについて質問され、それに私が3ヶ月ぶりの日本語でたどたどしく答える・・・の繰り返しだった。

 コトバの思考回路は、使わないと退化するみたいだ。日本語で質問されているのに、まず頭の中の返答が英語で出てきてしまって、それをなんとか日本語にしてアウトプットした。大学院で英語に散々苦労したけれど、ようやく少しは定着したようだった(日本語脳を犠牲にして)。

 イントネーションが標準語からずれていたらしく、学生さんに「東北の人みたい。」と言われた。(東北の方、悪気はありません。)

 

 

 これ以降、ゆりさんはムンバイに来る度に私の携帯に連絡を下すった。ゆりさんたちがワダラのスラムに開いている「光の教室」にも何回か見学に行かせてもらった。

 

 当時の教室は、チェンブー駅から電車で約30分、ワダラ駅で下車してそこから徒歩で約10分行った病院の敷地内(と言っても、まるで森の中)にあった。(ゆりさん達は学生と一緒により安全に行くために、現地ドライバー付きの車をチャーターしていた。私も初めての見学の日は、車に乗せてもらった。)

 そこは、「教室」と呼ぶには日本人の感覚からするとあまりにお粗末な、鳥小屋を改造した5畳くらいのスペース。(だから壁の一部は金網。)中には低いベンチが3列ほどあって、壁沿いには小さな棚や先生たち用の椅子、電子ピアノが所狭しと並べられていた。壁にはABC…のアルファベットのポスター。

 それでも、教室の開く時間(10時か10時半)が過ぎれば、子どもたちは三々五々集まってきて、にぎやかに勉強を始める。その日は10人くらい来た。年令は3〜15歳くらい。かわいい。B5サイズほどの小さな個人用黒板を使って、アルファベットを書く子。これまた小さなノートにえんぴつで計算を始める子。それをインド人女性の先生が回って見ていく。日本から来た学生さんたちも、一生懸命子どもたちを助けている。

 12時過ぎになると、勉強は終わりでお昼の時間。教室では給食を出している。見学した日のごはんは、鶏肉や野菜がゴロゴロしたスパイシーな煮込みごはん。

 

 これだけ見ていると、ほのぼのとした教室風景だが、教室の運営は山あり谷ありのようだ。例えば、現地でのパートナー団体や、雇った先生との間に起こる軋轢(特にお金関係のトラブル)。また、教室に来ている子どもたちの住むスラムの一部の家々を、ムンバイ市が破壊してゴバンディに強制移住させたこともあった。(つまり、ワダラに教室を開いているのに、子どもたちの一部は別の場所に行ってしまった・・ということ。)

 私が聞いただけでも、ここには書ききれないほどの事件やトラブルを乗り越えて、「光の教室」は今も続いている。もちろん、大変なことばかりではない。2013年からは、ムンバイ市内のダンス学校の代表ブライアンさんの強力なサポートもあって、毎年9月に小さなホールを借りてダンスの公演を開催している。インド人はダンスが大好き。スラムの子どもたちと日本の大学生が一緒に踊っている姿は、生き生きしていてとても素敵だった。しかも、どちらもかなりダンスが上手くてびっくり。(私は小さい頃バレエをやっていたので、踊りにはうるさいのですが。)

 

 こんな風にして、「光の音符」さんの活動は私が端から見ているだけでも、ムンバイの子どもたちと日本の大学生たちにとってかけがえのない生きた経験を与えていると思う。そんな自分たちのことをゆりさんは「アホの集まりや。」と笑顔で言ってのけている。かっこいい。

 

リンク:光の教室(光の音符さんが開いているインドの教室のページ)

 

チェンブー駅の近く。フルーツ屋さん。

2件のコメント

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    >大学の長期休みを利用していつもインドに渡っている。夏と春には、スタディツアーでたくさんの学生さんたちも来る。
    これは学生さんにとっても好い経験になりそうですね。企業でのインターンシップ体験よりも、個人的には好いと思います。^。^

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    >アヨアン・イゴカーさん
    いつもありがとうございます(^^)。
    はい、何度も休みの度に来ている学生さんもいて、そういう子たちは学生スタッフとして情熱的、主体的に活動していました。

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