第1学期(2012年6~10月)⑰初クラスとケータイ

(※このお話は、一軒目の家に引越しする2日前の出来事なので、まだ私は学校のゲストハウスに住んでいました。時間がちょっと前後しているのでご注意ください。)

 

2012年6月18日(月)。雨期なので湿度は高いけれど、雨は降ってなかった。

その日は、私のインドの初授業のある日だった。初授業は「グループ・ラボ」という、新入生たちがお互い打ち解けあうためのクラスだった。

14時。ソーシャルワーク学部の生徒たちがソーシャルワーク棟の指定された教室にそれぞれ集合。

私の入った教室には、25人の学生がいた。天井には扇風機(ファン)が回っている。

インド人学生は女子も男子もみんなラフな格好。たいてい、Tシャツにジーンズとか、クルタ(インドのチュニック)にジーンズかゆったりズボンか、女子はレギンス。

たいていの子が大学からストレートで修士に来た21歳(インドの文系大学は3年間なので)。ちなみに、そのクラスには9つの専攻から数人ずつ学生が振り分けられていた。が、当時の私は誰がどの専攻かも分かっていなかった。

人生初の英語の授業に、期待と緊張でドキドキだった。

 

 程なくして、女性の先生が2人入ってきた。

「ハーイ。」

どちらも身長155cmくらいで、お腹周りが大変ふくよかに膨らんでいる。体型はとても似ているのに、性格が正反対。お名前を覚えられなかったので、ここでは敬愛を込めて黒むっくり先生・白むっくり先生と呼ぶことにする。

 黒むっくり先生(30代くらい)は黒髪のショートヘアで、表情もきりりとしてクールな男性的な印象。白むっくり先生(50代くらい)は同じくショートヘアでも、猫っ毛の白髪。柔和な表情をたたえた優しい女性的な人だった。グループ・ラボはこの二人の絶妙なバランスの掛け合いでスタートした。

 

 グループ・ラボは全4回、毎週月曜にある2時間のクラスだった。

1回目は、自己紹介アクティビティ。いくつかゲーム形式でやったけど、覚えているのは一つだけ。それは名付けて「オレの質問に答えろ!」(そのまんま)。

まず、教室の中で、椅子を外向きにした円を作る。そこに生徒の半分(13人くらい)が座る。残り半分の生徒は、その円をぐるりと囲んで立つ。そして、立っている人が座っている人に質問をする。質問は何か一つだけ決めて、座っている人全員に同じ質問をしながら回っていく。座っている人の応える時間は10~20秒で、どんどん回転していく…というもの。

 

 私が考えた質問は「あなたの好きな動物は何?」

インド人学生たちの答えは「犬!」が圧倒的に多くて驚いた。ムンバイでは路上に野良犬があんなにいっぱいウロウロしているのに…それでもどうやら犬は愛されているらしい。他には「うさぎ」が1人、変わり種では「馬」と答えた、なんとなく馬顔の美人がいた。

 他の子たちの質問はほとんど忘れてしまったが、一つすごかったのは「あなたを3つの言葉で表現しなさい」という問いをぶちかました女の子アンシュ。彼女は眼のぱっちりした親切な才女で、その後もいろいろと助けてくれることになる。

 

 初めてのクラスは楽しくて、あっという間に終わってしまった。が、教室を出てすぐ、

「……おっとぉ。」

猛烈な眠気に襲われた。きっと2時間気を張り詰めていたんだろう。初めだから消耗した、というのもあるだろうけど、『こんな調子で、これから大丈夫か?』とうっすら思った。

 

***

 

 グループ・ラボの後、学校の最寄り駅ゴバンディの駅前に携帯電話を買いに行った。駅までは学校からオートリキシャで5分弱。料金は片道12ルピー(約20円)で、初乗り料金の範囲内だった。(初乗り料金は、物価の上昇に伴って年々上昇中↑)

 インドでは携帯電話を使いたかったら、電話番号などの情報の入った「SIMカード」と「ケータイ本体」が必要だ。今でこそ日本でもSIMカードが一般的になっているけれど、ガラケー世代の私には、SIMカードの存在は初めよく分からんかった。

 

 SIMカードは、その2日前に学校内でゲットしていた。学校のロビー的な場所に、ボーダフォンやタタ・ドコモの携帯電話屋さんが、新入生目当てでブースを置いていて、そこで買ったのだ。(だから、そこで買った学生も多くて、みんな携帯の番号が通し番号になっていたので、似た番号が多かった。笑)

その時のSIMカードは一つ106ルピー(約170円)。インドの携帯電話はプリペイド料金のものが多くて、私の買ったSIMカードにも数十ルピー分のプリペイド分が含まれていた。それはムンバイのSIMカードなので、ムンバイ市内なら1分につき1ルピーで話せた。(市外や別の州にかけると高くなる。)プリペイドした分を使い切ったら、街中の携帯電話屋さんか、小さな商店(けっこうどこでもガラケー端末一つでおじさんがさっとやってくれる)で、また入金すればいい。

 

 さて、私がゴバンディ駅近くのボーダフォンショップで買ったのは、ほぼ最安値1250ルピー(約2000円)のシンプルな携帯電話(ノキア製)。スマホもあったけれど値段が高いし、大学でも新しい下宿でもノートパソコンをwifiに繋げるので、とりあえずいいや、と思ってやめた。

 さぁ!SIMカードも携帯本体も揃った。ゲストハウスの部屋に戻ってわくわくとカードを本体にセット。東京の実家の番号を押す…。

「…あれ?」

うまく繋がらない。何度がんばっても、繋いでくれない。がっかり。

 

 部屋に戻ってきたタラに窮状を訴える。

「SIMカードを入れたのに、電話かけられないよー。」

「あら、すぐは無理なのよ。カードを入れてから1~2日かかるのよね。」

今(2018年現在)はもう、インドでももしかしたらこんなことはないかもしれない。

ともあれ、2012年当時、私の電話が開通したのはその2日後だった。

コメント

  1. […] 初めのグループ・ラボで一緒になったアンシュ […]

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