第1学期(2012年6~10月)⑱フィールドワークの準備

 フィールドワーク!それは私のインドでの学びの宝庫\(^ヮ^)/

 

フィールドワークって何をしたかと言うと、NGO(日本でのNPOみたいなもの。Non Govermental Organization:非政府組織)で週2回(月曜と火曜)フルタイムでインターンすること。

 比較すると、日本のNPOは活動分野が趣味的なものから社会福祉まで多岐にわたっているけれど、インドのNGOは社会福祉・教育系のものが多い。後者の多くは、何か社会的な問題があって、困っている人たちのために活動をしている。例えば、所得の低い家庭の子供の支援とか、職業訓練とか。

 

 まず、フィールドワークを始める前に大変なのが学校側。ソーシャルワーク専攻の学生は200人いて、先生方は提携先のNGO団体に学生を2~4人ずつうまく振り分けないといけない。もちろん、学生たちだって興味のある団体・分野は一人一人違う。ところてん式にスポッと簡単には分けられない。

 ということで、まずはグループ・ラボのメンバーごとにNGO訪問をした。見学先の団体は分野ごとに3つあって、それは

①教育(education

②保健(health

③仕事・生活のための手段(livelihood)。

他にも多種多様な分野で活躍するNGOがあるけど、この3分野はもっともオーソドックスな支援の内容だ。

 

 6月18日(月)。午前中にフィールドワークのためのオリエンテーションがあって、その日の午後に前回書いたグループ・ラボがあった。そして、その翌日から週に1回のペースでNGO訪問がスタート。私たちのグループが訪問したのは、

 

 6月19日(火)教育分野:NGO“Prerana”(ムンバイ中心部Kamatipura

 

 6月25日(月)保健分野:“郊外ヘルスケアセンター”(ムンバイ東部、大学院からオートリキシャで10分くらいで着くシヴァジーナガ病院内)

 

 7月2日(月)仕事分野:NGO“Kherwadi Social Welfare Association (KSWA)”(ムンバイ北西部の繁華街Bhandraの近く)

 

 訪問の流れは、こんな感じ。

 

まず朝10時か11時に訪問先の団体まで自力で行く。

 (学生に知らされるのは団体名だけ。グループの中に誰か仕切ってくれる人がいて、場所や行き方を調べてくれる。その人中心に駅で待ち合わせをして、現地へワイワイ向かう。)

  ↓

 現地で先生と合流。団体の事務所や現場で話を聞いたり、質問をしたり、見学する。

  ↓

 終了。家に帰る。訪問レポートを作る。

  ↓

 翌日の午後14~16時に、学校内で先生とグループディスカッションの時間。見聞きしてきた物事について議論したり、フィードバックを受ける。

 

 この流れのどれもが、私にとってはたいへんな行動・作業だった。

まず、駅までオートリキシャで行くのは、数回で慣れられる。オートはそこら辺を何十台もブンブン走り回ってるので、道端に立って斜め下45度に手を挙げたら、止まってくれる。で、

「ゴバンディ ステーション?」

と聞いて、OKなら頷いて連れて行ってくれる。料金はムンバイの場合、安心のメーター制。メーターが上がった距離の分だけお支払い。

 

 次。駅での同級生との待ち合わせは、たいてい待たされる。(そのうち、自分も待ち合わせ時間から10分くらい遅れていくようになる。それでだいたい丁度いい。)駅で切符を買うのも待たされる。10何人くらい並んでいる列の後ろに付いて、片道/往復で切符を買う。(もう少しスマートな切符の使い方もあります。それはまたいずれ。)

 

 メンバーがそろうと、列車に乗車。これが慣れないうちは至難の業。電車に乗るのが。

ムンバイのローカル電車はただの電車ではないのです。曰く、ムンバイの電車に乗るのは戦いだ!(特に女性車両…かな?)ただし、この話は長くなるので、これも割愛します。別の機会にたっぷりと。何が戦いなのかだけざっくり書いておくと、車両がたいていメチャ混みだということです。

 

 さて、なんとか電車に乗り込んで目的地の最寄り駅に着くと、今度はその辺にいる現地の人に道を聞きながら訪問先の建物まで歩く。(街に地図はない。その頃はまだグーグルマップも今ほど充実していなかったし、スマホを持っている学生も一握りだった。)

 

 で、目的地にたどり着くと、ご挨拶してからさっそく説明・見学開始。しかし、ある意味、NGO訪問の一連の流れでこれが私には一番きつかった。それは、説明されてることが、何一つ聞き取れない…(泣き)。

 

 一つ目の団体が最も辛かった。

ある一室で皆あぐらをかいて座って、スタッフの女性2人が話をしてくれたのだが、ほんとに全く分からない。彼女たちは英語で説明してくれた。でも、インド英語が全然聞き取れなかった。メモを取りたくても取れない…。

 初め、私は部屋の隅の方で話を聞いていて、私が苦戦していることに気付いたまわりの人たちが、最前列に私を座らせてくれた。さっきより声はクリアに聞こえる。それなのに、全然歯が立たない。途方に暮れてしまった。

 その場で覚えた無力感は、今でも忘れられない。部屋に電気は点いていなかった。開け放たれた窓から入ってくる午後の光。天井で回る扇風機(ファン)。静かなトーンで話している女性。女性の前に置かれている低い木の机の鈍い光沢。それだけが鮮明に記憶に残ってる。

 

 一つ目の団体プレラナは、ムンバイで「吉原」的な場所のカマティプラで、セックスワーカーの子供たちを小さなケアセンターで保護・支援していた。…そんな内容を、見学の後学校に帰ってきて、食堂で懇切丁寧に私に説明してくれたのが、アンシュ。彼女は、びっしり書いてきたメモを見ながら、ゆっくり、根気強く私に見学内容を教えてくれた。私がNGO訪問のレポートを書くことができたのはひとえにアンシュのおかげだ。もう、ひたすら感謝。

 

 訪問翌日のグループディスカッションも、試練だった。今度は、友達の発言がほとんど分からない…(涙)。

大学院のみんなはインド全土から来ているので、母語も違うし英語の訛りも人それぞれ。しかも人によってスピードや調子も違う。誰かの話し方に慣れる前に、別の人が話し始めてしまってとてもついていけない。しかも、英語が苦手な学生はヒンディー語で話し始めるので、ますます敵わない。

 ディスカッションでは、椅子で円を作って座って、初めに一人一人が自分の考えを発表する。その後に先生がファシリテーターになって質問をしたり議論をしていく。ここで分かったのは、インド人学生は意見を求められた時に発言し慣れてる、ということ。私は一言二言が精一杯なのに、彼ら彼女らは(私には内容は理解できなかったけど)ペラペラしゃべる。ついでに言うと、意見を聞かれずとも授業でもどんどん手を挙げて発言したり質問する生徒が多い。たいへん能動的。

 とは言え、3回目の訪問やグループディスカッションにもなれば、少しは内容が分かるようになってきた。(良かった…。)3つの団体すべてに共通していたのが職業訓練の支援で、『仕事って良い生活を作るために直結するんだな。』と感じた。

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