1.第1学期(2012年6月~10月) ①ムンバイに降り立った夜

夜中の3時だったのに、そこには信じられないくらいの数の人々がいた。

2012年6月10日(日)未明。ムンバイ国際空港のゲートを出た私は、まず人の多さに圧倒された。そして、ものすごく蒸し暑い。その時の私のいでたちと言えば、長袖タートルネックにパーカーを羽織り、ジーパン、長靴下、スニーカー。あっという間に汗をかいてしまった。

 ゲートの外で待っていた数100人の浅黒いインド人の人々は、中から出てくる一人一人をじっと注視している。私は気圧されつつも、父からもらった30年物のやたらガラガラうるさいスーツケースを押して広場の奥の方へ進む。ちなみに、渡航時の荷物はスーツケース、ノートパソコンや変圧器を入れたリュック、そして貴重品類を入れた肩掛けポーチ。

あちらこちらに、名前を印字した白い紙を掲げて立っている人たちがいた。たいていはホテルのお出迎えサービスだろうな。私には、インド政府奨学金の人が迎えに来てくれているはず!…ほどなくして、自分の名前を発見。私の名前の印字された紙を持っていたのは、小柄で肌の浅黒いおじさんーナビンさんーだった。知り合いも誰一人いないムンバイでこの時、このおじさんがどんなにか頼もしく見えたことか・・。

ナビンさんは私のスーツケースを引き受けてくれて(ジェントルマン!)、タクシー乗り場まで運んで行った。実際、この後どこに連れて行ってもらうのかもよく分かっていなかった。ひたすらナビンさんだけが頼りだった。黄色いタクシーの車体の上のラックに、運転手さんが私のスーツケースをほいっと乗っけて、私たちは車に乗り込んだ。正直、スーツケースが落っことされないか心配だったけれど、信じるしかなかった。ナビンさんは助手席、私は後部座席に一人。開け放たれた窓から入ってくる風が生ぬるい。あまりに暑くて、タートルネックの下に来ていた長袖シャツをどさくさに紛れて脱いでしまった。

オレンジ色の街灯だけが延々と続いていく。土地勘が全くないだけに、道中がえらく長く感じられた。ナビンさんが連れて行ってくれたのは、空港から1時間ほどかかるマリン・ドライブという地域。当時の私にはちんぷんかんぷんだったが、そこはムンバイの南側で、イギリス統治時代からこの街の中心的な場所の一角だった。

 

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