今なお根強いインドの不可触民差別(最近のニュースから)

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こんにちは。

先週末の台風で、自宅が一晩停電したみやまです。

各地で被災された方々には、心よりお見舞い申し上げます・・。

台東区では台風の際ホームレスの男性が避難所へ入ることを拒否された、というニュースがありましたね。いろいろな見方がありますが、社会における「差別」の一つの表れだと思います。


さて、このブログでも何度かインドのカースト制度による差別について書いていますが、最近見つけたカースト差別についての記事を2つほどご紹介します。

ちなみに、過去の記事はこちら


父親が、自分の娘と結婚した不可触民の花婿を殺すために殺し屋を雇った(南インド)

ワシントン・ポストの記事(英文)(2019年8月20日付)

ワシントン・ポストの記事(日本語 ※有料)(2019年9月16日付)

2018年。ところは南インドのテランガナ州。

若いカップル、プラナイ(男の子23歳)とアムルタ(女の子21歳)がいました。

プラナイは不可触民(4つのカーストの下に位置付けられる)の出身。アムルタは商人階級(おそらく、4つあるカーストの内、上から3つ目)の出身。

2人は高校の時に知り合って、仲良くなりました。女の子は両親にカーストの低いプラナイと付き合うことを反対されて、2018年1月に家出。そして、数人の友達だけが見守る中、2人は地元から離れた州都ハイデラバードで結婚しました。

数ヶ月後に女の子アムルタが妊娠。2人はオーストラリアで第2の人生を歩む計画を進めていましたが、彼女の妊娠のため計画を延期しました。8月に2人は結婚披露宴を開きましたが、その場に女の子アムルタの両親は現れず。その時すでにアムルタの父親は地元の政治的リーダーを介して、花婿の殺人のために殺し屋を雇っていたようです。

運命の9月14日。

妊婦となったアムルタの健診を終えて病院から出てきた2人。そこに殺し屋が現れ、花婿プラナイを襲い、彼の命を奪います。

この事件後、2人の地元の世論は真っ二つに。当然ながら、カースト差別によって殺人事件を起こしたアムルタの父親は非難されましたが、象徴的だったのは父親の立場を支持する人々もまた多かったことです。そういう人たちは「両親保護協会」なる組織を作って、獄中にいた父親を訪ねたとか。ここに、インドの「不可触民」に対する根強いカースト差別が見て取れます。


▶︎記事から見つけた最近のデータ

①代表的な4つのカーストの下とされる「不可触民」(ダリットとも呼ばれる)の人口は、インドの全人口13億人の約17%を占めている。

②昨今では違うカースト間での結婚は一世代前よりは増えていて、全結婚の5.8%ほどある(2017年の調査)。


野外で用を足していた不可触民の少年2人を、男性2人が殺した(中央インド)

BBCの記事(英文)(2019年9月26日付)

この事件からは、カースト差別の問題の他にインドの公衆衛生(まだ全家庭にトイレがない)の問題も浮き彫りになって来るのですが・・。

先月、インド中央部のマディヤ・プラデーシュ州の村での出来事。

村道の近くで、いとこ同士で外で用を足していた不可触民の男の子ロシュニ(12歳)とアヴィナシュ(10歳)が、高位カーストの男性2人に棒で殴られ、殺されてしまいました。男性2人は逮捕され、起訴されました。

公衆衛生の問題に関しては実際、インドのモディ首相の肝煎りで「貧困家庭にトイレ設置を」という政策が、2014年から進められているのですが、2人の男の子の家にはトイレがありませんでした。

インド政府はトイレ設置の施策を推し進めていますが、

  • 水不足
  • 仮にトイレを設置しても、メンテナンスできない
  • 野外でトイレをしていた生活習慣をなかなか変えられない

などの理由で、なかなか「使えるトイレ」を「人々が利用する習慣が根付いていない」というのが現実のようです。


さて、いかがでしたでしょうか。

身分(カースト)の差別にしても、おトイレを使う習慣にしても、一度人間の心身に染み付いたものはなかなか変えられない一面があるようです。私も保守的な部分は保守的ですが、人の気持ちや安全が関わってくる時には「何が一番大切なのか」を柔軟に考えて行動できるようにしたいものです・・。

2013年に農村自習で行ったインド東部オリッサ州の村。人口5000人ほどの村に、トイレは2ヶ所きりでした。当然、野外トイレを実践したわけです・・。

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