「カーストは政治利用される?」インド人留学生の講演会に行ってみた。

6月30日(日)夕方。

市ヶ谷のJICA地球ひろばで開かれたNPO法人開発メディアさん主催の、講演会に行ってきました。

お題はズバリ、「インド人留学生が“政治利用されるカースト”を語る」。

私は普段から「国際協力マガジン」というメールマガジンを購読しているのですが、それでこのイベントについて知りました。

(メルマガ自体は無料で、どなたでも申し込めます。興味のある方、ぜひ。)

以下が、メルマガに載っていたお知らせの全文です。

ちょっと長いですが、講演会の概要が分かるので引用します。

国際協力ジャーナル 2019年6月17日号より

***

□  インド人留学生が“政治利用されるカースト”を語る □
63.9%。これは、5月に開票されたインドの下院議会選挙の投票率です。この数字が高いかどうかが微妙なところですが、日本の投票率53.6%(2017年の衆議院選挙)よりは上です。もっと言えば、このときの日本の20代の投票率33.8%よりも断然上です。
「投票したい候補がいないから選挙に行かない」。日本の若者の多くはこう口をそろえます。候補者のことをどこまで調べたのかは微妙なところですが、人数の多い高齢者のための政治がはびこっているのは事実です。「投票しても、どうせ変わらないから」と諦めモードの若者も少なくないと想像します。
翻って、世界最大の民主主義国家インドはどうか。多くの地域で若者の投票率は全有権者平均の数字を上回ったようです。ですがインドの選挙では、実は別の問題が起きています。それは「カーストの政治利用」です。これを「カーストポリティックス」と呼びます。
インドでは、1950年に公布された憲法でカースト制度は廃止されました(実質的にはなくなりませんが)。と同時に、低いカーストの人たちを優遇する「留保制度」が始まりました。留保制度をわかりやすく説明すると、低いカーストの人の「特別枠」を、大学入試や公務員試験に設けることです。この結果、高いカーストの人にとっては大学進学も、公務員への就職も“逆差別”を受けることになりました。
難しいのは、留保制度と民主主義の関係です。低いカーストの人の数は多く(日本でいう「高齢者」と状況が似ています)、高いカーストの人は少ないため(日本でいえば「若者」)、インドの政治家のほとんどは“低いカーストの人のための政治”をします。そのほうが選挙で勝てるからです。人数の多いグループが有利になる民主主義の特徴が表れていますね。
埼玉大学で学ぶインド人の留学生(22)はこう言い切ります。「僕はインドで選挙に行かなくなった。僕ら高いカーストのための政治をする政治家なんていないから。投票しても、どうせ変わらないから」。日本の若者と同じ意見ですね。
でも高いカーストの人たちはもともと優遇されていたんじゃないの ちょっとくらい不利益を被っても困らないでしょ?そう思う方もいらっしゃるかもしれません。ではカーストが高いからという理由で能力相応の大学に入れなかったら?希望の仕事に就くチャンスが減ってしまったら?う?ん、難しい問題ですよね。
今回のイベントでは、インド西部の街プネーで生まれ育ったインド人留学生が「カーストポリティックスの実態と思い」を日本語で激白します。カーストとは何なのか、平等とは何なのか、政治とは何のか、民主主義とは何なのか。これらを考えるイベントです。
■日時
2019年6月30日(日)17:00?19:15 (開場16:30?)
<タイムライン>(予定)
・16:30 開場
*開始時刻ギリギリに着かれると大変混み合います。早めにお越しください
・17:00?17:05 開始
・17:05?18:05 講演「カーストは政治利用される!僕がインドで投票
に行かない理由」(埼玉大学3年 アトレー・シュレヤスさん)
・18:05?18:10  休憩
・18:10?18:55 アトレーさんに聞いてみよう!
・18:55?19:15 交流タイム
・19:15 終了
*お時間がある方は終了後、市ヶ谷駅の近くのお店に移動して交流を深めましょう
(実費はご負担ください)。
■スピーカー
アトレー・シュレヤスさん (Atre Shreyas)
インド西部のプネー出身。埼玉大学教養学部グローバルガバナンス専修3年。2017年8月から埼玉県のラブアンバサダー(観光大使)に任命され、活動中。「カースト制度について、色んな疑問とステレオタイプを解けたらと思います。僕の経験は一人のインド人の話ですが、僕が経験したすべて本当の話です。」
■ファシリテーター
篠田茉椰(Maya Shinoda)
ganas学生記者5年目&早稲田大学国際教養学部5年生。ベトナム人の父と日本人の母を持つハーフで、国際政治を専門に勉強している。父がベトナム戦争を経験した影響で、ベトナム戦争の原因や結果に興味を持ち、ベトナムに今でも残る戦跡をJEEPで回る活動をしたこともある。机上の理論を学ぶ傍、実際の歴史を目の当たりにするべくフィールドワークを大切にする。2017年、ソウルで開かれた国連主催の日中韓学生会議にも参加し、国際関係の改善に尽力する。
■会場
JICA地球ひろば セミナールーム600
〒162-8433 東京都新宿区市谷本村町10-5(最寄り駅は市ヶ谷です)
https://www.jica.go.jp/hiroba/about/map/index.html
■参加費
1000円
*参加費は返金できません。ご了承ください。
■申し込み方法
下記のチケット申し込みサイト「Peatix」よりお申し込みください。申し込みは、
参加費のお支払いをもって完了します。
https://india-caste-politics.peatix.com/
■〆切
6月25日(火)
*定員に達し次第、締め切ります。お早めの申し込みが確実です。
■定員
60人(先着順)
■対象
社会人、大学生・院生、専門学校生、高校生
*下記に興味のある方にオススメです
・カースト制度の政治利用について知りたい!
・インドの「逆差別」について知りたい!
・日本で学ぶインド人留学生から本音を生で聞いてみたい!
・インドに住んでみたい/留学してみたい/仕事してみたい!
・メディアが流す情報をインド人がどう思っているのか知りたい!
・アファーマティブアクション(弱者を優遇する措置)について知りたい!
・モディ首相についてインド人はどう思っているのか知りたい!
・途上国を知りたい!
・国際協力・開発・途上国に興味がある!
■主催
NPO法人開発メディア(NPOメディア「ganas」の運営団体)
ウェブサイト:http://www.ganas.or.jp/
フェイスブック:https://www.facebook.com/ganas.or.jp/
ツイッター:https://twitter.com/devmedia_ganas
インスタグラム:https://www.instagram.com/devmedia_ganas
メール:devmedia.ganas@gmail.com(担当:篠田)

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で、実際の講演会ですが、内容に対してメルマガのイベント紹介が詳しすぎたかな・・。

ともあれ、いろいろ収穫はありました。

主な柱は2つほどあったのかなと思います。

(の前におさらい。インドにはカーストという身分制度がヒンドゥー教徒を中心にいまだに残っており、それが数々の不平等や格差を生んできました。詳しくは・・あまり詳しくもないですが、以前書いたカーストの記事も併せてご覧ください。)

1つは、インドの「留保制度」に対しての、高位カーストの人々の不満。

インドでは、歴史的に差別を受けてきた低位カーストや指定部族に対して、国立大学への優先入学枠・公務員の優先就職枠があります(留保制度 Reservation)。

私が留学した大学院も、準国立大学のようなカテゴリーだったので、留保制度がありました。確か学生の半数はそれで入ってきてたはず・・。

講演者アトレー君の場合、彼は留保制度によって保護されない高位カースト出身だったため、大学受験の際、留保制度以外のオープン枠で少ないパイを争わなきゃならなかったそうです。

高位カーストの受験生は競争率が高くて大変なのに、低位カーストや指定部族出身(=留保制度で優遇される人たち)だと、前者より点数が低くても合格できたそうな。・・そりゃ、感情として嫌にもなりますね。

2つ目は、選挙の際、人口の多い層(カースト)にばかり政治家の目が行くことに対する高位カースト(人口的マイノリティー)の不満。

インドにおけるカースト別の人口は、高位カーストが少なく、低位カーストの方が多いです。だから、「政党は選挙でより多くの票を取るために、人口の多いカースト(低位カースト)から候補者を出す」すなわち、カーストが政治に利用されている・・と言う指摘。

私も少しネットで調べてみました。

一番分かりやすかったのが、この言葉。

“Indians don’t cast their vote, they vote their caste. “

(インド人は単に投票するんじゃない、彼らは自分たちのカーストに投票するんだ。)

出典:ニューヨークタイムズ 2019年2月2日版

Ruchir Sharma “Casting Their Votes, by Voting Their Caste”

https://www.nytimes.com/2019/02/02/sunday-review/narendra-modi-india-politics.html

この記事を書いているシャルマさん自体も、北インドの高位カーストのバラモン出身。時代が移り変わるにつれて、社会インフラも整備され、低位カーストの人たちの社会的地位も向上している。けれど、政治に関しては、人々は自分の宗教やカーストでものを考えている・・といったことが書いてあります。

講演の話に戻りますが、そのような状況があって、高位カーストである講演者は選挙権を得た18歳から日本に留学する前の3年間、投票に行かなかった・・と言うことでした。

ふむ。確かに、その気持ちは分かります。

実際、日本で投票に行かない人たちも、

『自分が投票に行っても何も変わらない』

『自分の声を代弁してくれる人たち(党)がいない』

『政治は自分と関係がない』

と思っている方が多いのではないでしょうか。

でも・・。

それだと、インドでも日本でも投票に行かない人たちは、泣き寝入りをしているのと一緒なのでは・・と思ったりします。

なんか、もったいないよね、と個人的には思います。

少し話がずれましたが。

これこれこう言う状況がある。だから、そこから私たちはどう考えたり、行動していったら良いのか?

・・そこまでみんなで考えられたら、さらに良い会になったんじゃないかな?

ちょっと話を拡大しすぎでしょうか。

(講演会の時はなんとなく消化不良だったんだけど、それが↑こういう形になれば良かったのかな、と思いついたのは帰りの電車の中でした。モヤモヤしていることを、もっと素早く言語化できるようになりたい。。)

ともあれ、質疑応答の時間もたっぷり取られていて、その後に講演者を含め有志でごはん会もあったので、いろいろと質問したり、みなさんとお話もできてとっても良かったです。感謝。

最後に蛇足。

今回の講演会を聞きに行く時に、自分の肝に銘じていたことがありました。それは、これから聞く話は、

「インド社会でいろんな現実がある中の、あくまで一つだ。」

と捉えること。

インドの社会は、とても多様。民族・宗教の違いから始まって、カーストによる生活習慣・行動・考え方も本当に様々です。そんな中で、なるべく多角的なものの見方をしたいなぁと思っています。

そのために色々な情報を集めるにも、今回のような留学生の生の声を聞けるイベントは良い機会でした。

2件のコメント

  • SECRET: 0
    PASS:
    >人口の多い層(カースト)にばかり政治家の目が行くことに対する高位カースト(人口的マイノリティー)の不満
    インドは格差が激しいと思いますが、人口の多いカースト(スードラ)やアウトカーストの人々が、その貧困層の多数を占めていると思います。(具体的な数字は把握していません。)政治家がその貧しい層であるマジョリティのための政策をしているとは決して思われません。むしろマイノリティーの人々が属する特権階級のための政治がなされているのではないでしょうか。タタ財閥、ミッタル・スティールなど、ごく一部が殆どのインドの富を持っている、そういう印象があります。(数十年前に亡くなったと思いますが、世界的なインドの富豪カーンと言う人物もいました。記憶違いかもしれませんが。)
    今回講演で話をした学生のような考え方をする者もいる、と言う見方が正しいと思いますが、実際に滞在されていた方のインドの政治の印象はどうだったのでしょう?

  • SECRET: 0
    PASS:
    >アヨアン・イゴカーさん
    こんにちは。
    正直、政治の話までは詳しく追えていません。
    言えるのは、例えばムンバイ市ではヒンドゥー教系の政党が強くて、牛肉禁止令まで出していたりすること。
    また、投票率が高くて、州によっては80%とか行ってるので、民主主義に希望が見えること。
    そして、2013年頃に新しくできた汚職撲滅を標榜する党AAPが瞬く間に支持を得たりしていて、政治による社会変革の余地も期待できること。
    ただ、アヨアンさんのおっしゃる通り、やはり経済的・社会的に地位が低い人達のための政治はあまり熱心に行われてきていないと言えます。
    天地ほどの開きのある格差社会が、その現実を表しているのではないでしょうか。

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