スッキリして私は「お手洗い」から奨学金事務所に戻った。(まだ誰も起きていなかった。)
私は既になにかを成し遂げた気分になっていた。
でも、ホッとしたら今度はお腹がすいてきた。食べ物は持ってない。お金は昨晩、空港の両替で手持ちの米ドルの半分をインド・ルピーに替えてあった。
『よし、近くのお店で何か買ってこよう。』
私はもう一度事務所の玄関を出て、ビルの入り口にある椅子に座っていたウォッチマン(いわゆるガードマンのこと)のおじさんに身振り手振りしつつ、英語で声をかけた。
「どこかお店はありますか?」
おじさんは笑顔で首を振って外を指さした。
「うわっ。」
いつの間にか、外は嵐になっていた。ビルから道路を隔てた正面の海が荒れていた。風がボーボーうなって、雨が斜めに降っていた。初めて体験するモンスーンだった。
私は諦めて、すごすご部屋に戻った。
しばらくしてナビンさんが起きてきて、「トイレに行くか」と尋ねてくれた。もしかしたら、先刻私が必死に叫んでいたのが聞こえていたのかもしれない。
廊下の奥の家の住人は、奨学金事務所トップのマンジスタさん(女性)だった。10時ごろ、彼女が出てきた。
「お腹すいたでしょう。」
「はい‼︎」
ほどなくして、サリーを着た肌の浅黒くてやせたおばあさんがビスケットとチャイ(インドのミルクティー)を運んできてくれた。
「ダンニャワード(ありがとう)。」
おばあさんは無言のまま笑顔で去っていった。
その時は知らなかったけど、このおばあさんはインドの中流以上の家庭でよく雇っているメイド(お手伝い)さんだった。
私はビスケットをがっついた。全然足りなかった。
『インドの朝食はこんなに少ないのかな…。』と思っていたら、11時ごろにもう少し出てきた!今度は、小さなパンのトースト、バナナ、薄いオムレツ(刻んだ玉ねぎと青トウガラシ入り)。
ステンレスのお皿に乗って、フォークも付いていた。そしてもう一杯チャイ。
(ちなみに、朝食はこっちで、初めに出てきたお茶はインド人が寝起きに飲むお茶だった。)
それでなんとか空腹は満たされた。マンジスタさんの4歳くらいの息子グロッフィーが遊びに来てくれて、私にいろいろカラーペンを得意そうに見せてくれた。かわいかった。12時ごろにまたマンジスタさんが来た。
「これからゲストハウスに行きなさい。明日の朝ナビンが迎えに行くわ。」
そうして、ナビンさんが昨晩ふられたゲストハウスに連れて行ってくれた。
そこは、ビルのワンフロアがゲストハウスになっていた。インド式エレベーターで上がると、まずカウンターでチェックイン。カウンターの後ろに看板が付いていた。
DELIGHT GUESTHOUSE
片面がA3サイズ以上ありそうな巨大な帳面に、おじさんが私のパスポートの情報を書き写していく。ナビンさんとはここで一旦お別れ。
「明日の9時にここに居るように。」カウンター横のベンチを指す。
「オッケー。」
コメント
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興味があってもなかなか未知の国へ行く勇気がない自分にとっては、他の方の体験記で伝わってくるドキドキ感とワクワク感がとても面白いです。今後のストーリーも楽しみにしています。
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>ブラックベルベットさん
だいぶ遅くなりましたが、コメントどうもありがとうございました!(^^)牛歩ですが、これからも地道に更新していきますので、また見に来ていただけたら嬉しいです。